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ねえ……
ん?……なに?
きこえるかな……
なにが……?
わたしのこえ……
きこえるよ……
フフ… ヒソヒソ…
いまいったこと……
うん……
いい……?
うん……
おねがいね……
「洋介!?洋介!?」
美奈子は血相を変えて寝ている洋介を揺り起こした。あの日、晋治が言った「一人二役」とは、まさにこの事だった。
「んん…?なんやあ?」
ベットの横には、肩を震わせ、涙を浮かべる美奈子が立ち竦(すく)んでいる。
恐怖にも似た強烈なショックが、美奈子の背筋を凍らせて行く。
「洋介!あんたどうしたとよ!何でよ!」
「美奈子?なんや、どうしたとや!」
いきなり揺さぶられ、そして無理やり起こされた洋介には、訳が解らない。
ましてや美奈子に怒鳴られているのだ。
「ちょっと?どうされました?彼女さん?どうかしたんですか?」
「あっ留美ちゃん」
それを聞いた美奈子は目を丸くして、バッグを肩に掛けた。
「留美ちゃん?なにそれ!」
「美奈子ちょっ‥ちょっと待って‥‥」
美奈子は小走りに病室を出て行った。
「……喧嘩?」
「いやあ……意味不明…留美ちゃんって言ったら駄目とかなあ」
「さあ……」
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