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「それより追いかけなくていいんですか?」
「よかよか!あいつ最近、何でか知らんけどカリカリしとっちゃん……それより、まだ歩くのがやっとやけん追いかけられんよ!」
「あはっ…そうかも」
「そうかもって、留美ちゃんわざと言いよろう?」
「うふふ‥ごめんなさい」
「ねえ‥タバコ吸いに屋上いくけん、車椅子持ってついてきちゃらん?行きはどうにか大丈夫やけど、帰りの歩きがまだねー」
「そっか‥いいですよ」
洋介はタバコを掴むと、留美の肩を借り、覚束(おぼつか)ない足取りで歩き出した。
「結構いい感じに歩きよろう?」
「本当ですね‥リハビリ頑張りようもんね!」
「そうよ、めちゃくちゃ頑張りようよ」
屋上につく頃には、洋介の息は完全に上がっていた。
「洋介さん?車椅子使う?」
「いいや‥景色が見えんけん、肩貸して」
洋介は留美の肩に手を回し強く密着させると、そのまま2人は歩き始めた。
風の音だけが2人を包み込んでいる。
「ねえ…離婚すりゃあいいやん」
「ん…?そうねー」
「子供おらんっちゃろうもん」
「解らんやろうね…男には」
洋介が肩を抱く手に少し力を入れると、留美は、自然と洋介の胸に頬を寄せた。
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