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2人はゆっくりとした足取りで屋上の端まで歩むと、密着した体を自然と解きながら、無意識に手を繋ぎ合っていた。 9月も後半になるというのに、照りつける太陽がじりじりと、刺激を忘れた肌に突き刺さる。 洋介は、滲んだ額の汗を手で拭うと、寄り添う留美に目線を移した。 太陽の下で、その透明感をより一層増す留美の白い肌は、看護衣の純白と一体となり、洋介の瞳に眩しく写り込む。 「留美ちゃん、他の看護婦に見られたらやばくない?」 「やばいよね」 洋介は再び金網の先に目をやり、手の力を緩めようとしたが、留美の手はそれをぐっと引き止めた。 「ん?」 「もう少しこうしていて……」 「う‥うん」 薬指にその存在感を誇示する無機質な冷たさが、強く握られた留美の手から伝わって来る。 そして洋介は、人妻である留美に惹かれつつある自分の変化に、戸惑いながらも気付き始めていた。 「忍…」 「ん…?忍って…」 「こうやって手を繋いだり、もう出来ないのね‥」 いきなり出てきた「忍」という言葉に、洋介は多少困惑したが、寂しげに俯く留美の瞳から目を反らす事が出来なかった。 脳裏に甦るあの映像… 「洋介さん?変な事言って‥ごめんなさい」 留美が手の力を抜くと、2人の手は触れ合う事を終え、余韻を残したままゆっくりと離れていった。 「田中さーん!刑事さん見えられてますよ」 洋介は、留美と顔を見合わせると、ぺろっと舌を出した。 「大丈夫ですか?車椅子‥部屋から持って来ましょうか?」 「え?」
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