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横に座る留美は予想以上にはしゃいでいる。
「洋介さん‥ドライブってどこに行くと?」
「ドライブとか言うたと俺やけど、はっきり言って全く思いつかん」
洋介は、焦がれていた留美が自分の隣に座っているかと思うと、年甲斐もなく、照れくささに顔を赤らめていた。
「海がいい」
「じゃあ箱崎埠頭にでも行く?でも砂浜がいいっちゃろ?」
「ううん。海ならどこでもいい!私…洋介さんの横に乗っときたいだけ」
許されない恋に歯がゆくも夢中にさせた、その女が今、自分と一緒にいたいと言った。
洋介の高鳴る鼓動は、正直な気持ちを内面から伝えて来る。
とうとう動き始めた‥その恋愛の鼓動は、もう止めることは出来ない。
俺は横にいるこの女が好きだ…
どうしようもない位、好きだ…
旦那から留美を奪いたい…
留美の心を奪いたい…
「洋介さん‥ずっと黙っとーよ」
留美は黙ったまま口を閉ざした洋介に、視線を一度向け、そして戻した。
もう4・5分もすれば、対岸の夜景が良く見える場所に着くというのにもかかわらず、洋介は倉庫が建ち並ぶ大通りの路肩に、いきなり車を止め…
そして、体を起こし留美を見つめた。
留美は、突然の事に動揺を隠しきれず、まっすぐ自分に向けられる洋介の瞳を、ただじっと見つめるだけだった。
「留美……俺、お前の事好いとう。結婚しとう人に、こんな事言ってごめんな…返事は要(い)らんけん」
嬉しい…
留美の小さな小さな声が、洋介の鼓膜に微かに届いた。
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