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留美は、気持ちに流されようとしている自分に抵抗を感じていた。
3ヵ月という触れ合いの中で、看護師と患者としての関係をもどかしく感じていたのは洋介だけではなかった。
震える洋介を抱き締めたあの日…
太い腕に肩を抱かれた時の胸の高鳴り…
自然と手を繋いだ時に感じてしまった…「永遠」
しかし自分は、新たな恋へ踏み込む事を許されない女である。
真剣な瞳で「好きだ」と訴えるこの男性を、不幸にしてはいけない。
私の軽率な行動が、この人を傷つけてしまう…
留美は自分にのしかかる「許されざる恋」の重みをひしひしと感じていた。
そしてその重みは、まるで始まりから、既に終わりを告げているかのようで、留美の目には切なさを通り越した絶望の涙が溢れて来たのである。
洋介は心配そうな顔を覗かせる。
「留美‥ちゃん?」
「ごめんなさい」
留美はそう言うと、顔を背け涙を拭いた。
「俺…いかん事言ったね。泣かせるつもりは…」
「ううん‥違うと」
留美はそれ以上を口には出さなかった。
「洋介さん…留美でいいよ。呼び捨てでよんで」
「……うん」
俺は留美を傷つけてしまったのか?
洋介は顔をしかめ、一点をただ茫然と見つめた。
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