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……ここは?
「洋介!おい!洋介!」
3人の看護師を引き連れた2人の医師は、真剣な表情でベットへと近付き、医療用語の羅列を始める。
「お母さん、そこちょっと通して下さい」
ベットの脇で洋介の顔を不安そうに覗き込んでいた母親の京子は、小さく二度頭を下げると、こじんまりと後退する。
父親の晋治も落ち着かない様子だ。
「先生。洋介パチパチッて目開けたんですよ。一回は、はっきり開けて目の玉も動きました」
医師二人は、洋介の口からチューブを取り除き、言葉を交わしながら体中をチェックしている。
「今日で二週間かな?」
「はい。14日目ですね」
医師の問いに呼吸器を整理する看護師が即座に答える。
「血尿がまだ濃いねえ……吉田君、消毒して包帯全部巻き直して」
そう言うと医師達は、ベットを三人の看護師に明け渡した。
主治医の菅原医師と中沢医師は、病室の隅で不安と一生懸命に闘っている初老の夫婦、晋治と京子に向き直り、笑顔で歩み寄った。
京子の不安げな表情は変わらない。
「菅原先生、洋介は…?」
「自発呼吸がしっかりしてきましたので、チューブを外します。術後の経過も順調ですね。後は意識が戻るのを待ちましょう」
晋治が顔を突き出し、目を丸くする。
「せ‥先生!洋介、目ば開けたですよ。パッチリ開けて目の玉ばですね……」
「菅原先生!」
看護師の大きな声に、菅原と中沢はベットへとって返した。
「ここどこ……?」
「田中さん!わかりますか?」
「ここは?美奈子は?」
ベットを挟んで、医師同士の医療用語が飛び交い、一瞬にして緊迫感が部屋全体に広がって行く。
「田中さん!ここはね!病院!病院ですよ!」
洋介は、回復には程遠い弱った肺を精一杯に膨らませると、大きな息を一つして、静かに目を閉じ、再び眠りへと落ちて行った。
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