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「あら‥おしっこの色もいいですよ。もうドレン、外すかもよ」
「うわー残念!管とったら留美ちゃんに消毒してもらえんやない」
「綺麗な彼女がいるじゃあないですか…」
「いや!俺は留美ちゃん一筋に変えた!」
「ごめんなさい」
留美は左手の薬指を洋介の前にすっと出した。
「なあーん!人妻?留美ちゃんって何歳?」
「私ですか?29です。それじゃあ、また来ますね‥」
留美は、デレーっと憧れの眼差しで見送る洋介を見ると、握られた細く白い指を口元に当て、クスっと微笑み病室を後にした。
ちょっとお!まじ綺麗!
病室の扉がひらくと、心配そうな面持ちで美奈子が入って来た。
「大丈夫?洋介……刑事さん来たよ」
「また?一昨日も来たろ?」
「大丈夫?帰ってもらおうか?」
「ん?美奈子さっきから大丈夫?大丈夫?ってなに?大丈夫くさ!暇やけん相手しちゃろ!」
「う‥うん」
「こんにちはーどげんですか?」
「どおも…」
まさに学生時代は柔道部といったがたいの持ち主、年は40半ばだろうか、七三にくっきりと分けた頭髪の下には、眼光鋭い細い目が、ベテランの貫禄を滲ませている。
「今日も話し聞かせてもらってよかね」
「いいけど、もう100回は話しとーよ。刑事さん他の話はないと?」
ベテラン特有の冷めた瞳である。
「それじゃあ、黒のセダンが動き出した所からいこうか!」
「またあー?」
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