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高三の夏。
僕は大学受験に向けて、深夜ラジオを聴きながら勉強していた。
最初は深夜ラジオが楽しくて聴いてただけだけど、聴いてるだけって結構退屈。
なんとなく参考書に手が延び、次第に集中が増し勉強に力が入る。
で、気がつくと聴きたい番組は終ってて。
でも、またそれが気分を変えるきっかけになったりもする。
そのままラジオを聴き続けるのも、CDを聞くのもありだ。
そんなこんなで夏休み中は、ずっと参考書を広っぱなしだった。
その異音に気付いたのはいつだっただろうか。
深夜。
決まった時間になるとラジオから音が消える。
音が消えるという表現は適切ではないね。
聞こえてくるのは砂嵐ばかりになった。
どの周波数に合わせても、変わりなく続く砂嵐。
おかしいとは思ったが、そう毎日続くとなると、次第に気にしなくなった。
だが、それも日を重ねていくうち段々と呟きのように聞こえ始めた。
「………ぉ…………タ………す…………………ク………ダ……………ぃ…………マ………ォ……………………………………ま…………」
幻聴が聞こえる程、身体に負担をかけるようなことはしていない。
いくら受験生だからって、そんなにプレッシャーを感じてもいない。
かといって、余裕があるほど成績がいいわけではなくて。
日々問題集と睨めっこが続いている。
僕はその日からラジオを聴くのを止めた。
「…まぉ…サ………ぉタ………す………ケ…………くだ………ダ……………さぃ……………マ………ォ………………ど………か…………さ…マ………」
砂嵐と幻聴は、秋になっても冬になってもずっと続いていた。
オーディオ端末の電源が入っていなくても、決まった時間になるとスピーカーから聞こえてくる声…のような音が気持ち悪くて、ヘッドホンをしてCDを聞くようにした。
センター入試前日。
勉強を早めに切り上げて寝ようと思った。
ヘッドホンを外した瞬間、はっきりとその声を聞いた。
『魔王様!!
どうか御復活下さい』
僕は目が覚める感覚だった。
身の毛もよだつほど恐ろしい声であったにもかかわらず、なぜか衝撃を受けた。
<僕が魔王? 何かの冗談だ>
『冗談などではありません!
魔王様、御目覚めを!!』
<僕は今から寝る。用件なら明日聞くよ>
そう思うと声は聞こえなくなった。
僕はベッドに入って、しばらくしてから気付いた。
謎の声と会話していた事に。
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