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『さて、もういいだろう』
魔王は僕に向けて言う。
『お前には出ていってもらおうか』
「貴様には出ていってもらおうか」
それはほぼ同時にハモって聞こえた。
『むぅ? 何者だ?』
「貴様を滅っする者だ」
女性の声と共に顔に何か液体がかかる。
『聖水か!?』
顔を、目を擦って、何気なく目を開く。
僕は真っ暗な視界から、人や物、色のある視界を取り戻した。
<……あ……彼女は……>
僕の視界に朝会った女の子の姿が映る。
「今です! 父さん」
彼女の声に応えるように神父は印を刻み言葉を紡ぐ。
神父は僕の額の前に片手をかざす。
僕の後ろで彼女も神父と同じ呪を紡ぐ。
次第に僕の身体がだるく、苦しくなるのがわかる。
『………ぐゥ…………やめろォ……』
「苦しいなら出ていけっ!」
彼女は言いながら聖水をかけてくる。
『………こんな………濃度の濃いものを…………ドコで………』
苦しみながら、僕の中にいる魔王が彼女を見据える。
「特別製だよ」
言い放つ彼女から、うっすらと金色に光る羽根のようなものが見えた。
『………グぅ………覚えていろ……』
その言葉を最後に僕の目の前は真っ白になった。
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