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柊一はマグカップに熱いココアを作って持ってきた。
「落ち着いたか?」
「…なんとか。ありがと、先生」
藍は青い顔のまま、ベッドの上で体を起こした。横にある小さな丸いテーブルの上にマグカップを置くと、柊一はそそくさと隣の部屋に行ってしまった。
(…倒れた理由…聞かないのかな)
隣の部屋からテレビの楽しげな笑い声が聞こえる。ぼんやりと一点を見つめたまま、藍は仄かに明るい寝室でココアをすすった。
「なんか欲しいもんある?」
柊一が濡れた温かいタオルを持ってきた。
「お腹すいた…」
「あぁそっか。そういえば俺も食ってねぇな、晩メシ」
何かぶつぶつ言いながら、また柊一は部屋を出て行った。
とうとうバレてしまった。玄関先でふらついた藍は、それでも1人で帰ると言い張った。しかし視界は真っ暗で、平衡感覚もなくなって、歩こうとすればよろけた。
柊一は見ていられなくなったらしく、こうして寝かしつけられた…というわけなのだ。
丁度正面にあった時計はもう10時半を過ぎていた。
(いつ帰ろうかな…)
薄明るいライトに照らされたココアがオレンジの光を反射した。
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