記憶

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  「…そうそう、教授からプレゼント」 「和菓子!」 「残念、ケーキでしたー!」 「教授ったら私の好み、いつになっても覚えてくれないんだから…」 ケーキも好きだけど…、と呟きながら、藍は立ち上がった。台所のケーキ皿を取りに行って、ふと時計を見上げた。 (3時50分…) 柊一のレッスンは5時からだ。こんな調子でも行かなくてはならない。いや、行かなければ藍は自分に対する信頼を無くしてしまう。 だが、今日に限って行きたくない気持ちが強い。また問い詰められるんじゃないだろうか。あんなことが続いたら、箏にだって集中できない…。 立ったついでに紅茶を淹れて、柚子の前に出した。 「シャワー浴びてくるから、お先に食べてて」 「大丈夫?」 「…ん?」 「頭、痛いでしょ?」 藍はにっこり笑って見せた。 「大丈夫」 隣の寝室に入って、ふと頭痛が激しくなった。柚子の心配そうな表情が、ずっと頭から離れなかった。  
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