音楽

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  どこかからメロディが流れてきた。 初めは優しく波を滑るものをイメージしていたが、やがてそれは怒って近づいてくるようにボリュームを上げていく… 大学の構内でかすかに響き渡る、不思議で懐かしい音色。凛として透き通った空気で満たされ、学生は何事かと驚いている。その正体を探す者、心地良さそうに耳を傾ける者、皆それぞれ反応は違う。 「『華傘 第一楽章 一輪花』…?」 ゼミ室の掃除をしていた城田藍は、モップを片手に難しい顔をした。さほど広くはないが、4人がかりでは結構時間がかかる。机や椅子を引きずる音で、メロディはほとんど掻き消されていた。 「下手ね…」 「あーいー!こっちもモップかけてよー」 机を運んでいた女子がこちらに向かって手を上げている。 「はいはーい」 藍は不機嫌な表情で掃除を再開した。
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