記憶

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* 海と空が一体になっていた。波立つ海面の色をそのまま塗ったような真っ青な空。 藍は1人、波打ち際で佇んでいた。素足に春の冷たい海水がまとわりつく。 何故ここへ来たのか自分でもよくわからなかった。散歩をしようと思って外に出、小道を通り抜けて、ひと気のない下り坂の途中にこの浜辺がある。その経緯は覚えているのだが、何を思ってここへ来たのかはわからない。 ただ、何か重く憂鬱な物が頭の上に乗っていて、振り払いながら、しかし懐かしく感じながら歩いていたことは確かだった。 「…身投げじゃないよな?」 後ろから低い声がした。 藍は驚いて振り向くと、 「駿…」 始め顔に笑みを浮かべていた山代駿は、彼女と目があった瞬間、怪訝な表情になった。 「こんなところで何してるんだ?お前、今日レッスンじゃ…」 近寄る駿に目もくれず、藍はまた沖合いに向き直り、砂浜に座り込んだ。 「何かあったのか?」 「駿は?講義終わったの?」 「講義はとっくに終わったよ。それよりお前、風邪ひくぞ」  
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