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「すっかり暗くなっちゃったね」
我に返ったのは、夜が更けて月が明るく、雪が再び降り始めた時だった。
「ああ。…そうだな」
「はいこれ。ありがとね。柊一先生には電話しておいたから、駿の分もね」
藍の肩にかけた自分の上着を渡された。
「帰ろうか」
そう言って藍は車に乗り込んだ。
「なんか…良い雰囲気?」
駿が煙草をくわえてライターに手をかざした時、藍が運転席の窓から顔を出した。
「…何の話だ」
車体に寄りかかっていた駿は煙を吐いた後、怪訝な目で振り返った。
「あなたと私のハナシ」
「…冗談だろ」
「冗談です」
上目遣いに駿をじっと見ていたが、窓をピシャリと閉めて引っ込んでいった。暗いせいか、駿が赤くなっていることに、幸い藍は気付いていないようだった。
しかしふと、何か別のことに気付いた駿は吸殻を靴でもみ消して、車に乗り込んだ。
(夜更かしさせてはまずいんだったな…)
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