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「え…?先生ご存知じゃなかったんですか?昨日は箏のレッスンだって…」
「そうだな……」
「……藍は、先生の所に行ったんじゃなかったんですね」
察しのいい柚子は、そう言った。
柊一の焦りの表情は変わらないまま、景色が飛んでいった。国道に出て、ようやく街を出た。いつもの穏やかな柊一の運転ではなかった。
「先生、落ち着いてください…何があったんですか?」
「すまないが柚ちゃん、一刻を争う事態になってしまったかもしれない」
柚子の心臓は嫌な予感に怯え、激しく高鳴った。藍は柚子の一番古い親友だ。
「…俺の責任だ。すべて…」
赤信号は、色とりどりの車は、時が止まったように静かだ。
「あいつを管理しきれなかった。……失格か」
「管理…?」
柊一の最後の言葉が、よく聞こえなかった。
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