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「藍!!返事をしろ!藍……!」
愛媛のホテルにいち早く到着していた駿は、後から遅れてきた尺八演奏家の秋口宏樹に事情を説明され、何度も藍の携帯電話にかけていた。
「秋口先生…あいつケータイは取ってるんだけど返事しやがらねぇ!」
4人は同じホテルに滞在する予定だった。今夜はリハーサルだが明日は本番だ。まだ時間はあるのだが、駿は携帯電話を握ったまま右往左往していた。
柊一と秋口、そして藍は同じ便にのるはずだった。だが藍は来なかったのだ。携帯電話も繋がらない。柊一は秋口に先に行かせ、自分は藍を探しに行ってしまったらしい。
「こんなことなら、一緒に来るんだった…」
「今頃柊一と柚が何とかしてる。お前は黙って座ってろ」
冷ややかな秋口の視線に、駿は凍りついた。普段穏やかな性格の秋口のそんな顔を見たことがなかった。
秋口は一流演奏家として有名であり、柚子の師匠だ。そして柊一は無二の親友であった。
「あいつには藍に対して責任がある。お前の介入するところではない」
「先生…何を言ってるんだ?」
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