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「藍!!…藍っ!!」
「み、見つけた…!」
柊一と柚子は瞬間、安堵からくず折れてしまった。
「あぁ…せん…せ……」
藍は柊一の稽古部屋で、壁にもたれたまま体を丸めていた。傍に開いたままの携帯電話が転がっていた。柊一は思わずその弱った体を抱きしめた。
「き、救急車呼んできます!」
柚子はポケットから携帯電話を取り出して、玄関の方へ去っていった。
「勝手に…は、入って…ごめ…」
「喋るな!脈は…」
息を切らしたまま、柊一は藍の腕を掴んで脈をとった。
「うっ…!」
嗚咽しながら胸を強く掴む。すでに体力が無くなっているようだった。額からいやな汗が滲んでいる。
「大変、先生!救急車、別の所に全部行ってて、早くても30分って…!」
「大丈夫だ、柚ちゃん。救急車呼ばないでいいよ」
「…だって、先生!!」
携帯電話に声が入らないように押さえている柚子は、藍の聞いたことのない呻き声に戸惑っていた。
「もしもし!あのっ…30分後でも構わないので、お願いしますっ!」
と、叫ぶように言った。
「柚ちゃん…」
仕方ない、と思いながら柊一は藍を楽な体勢にさせた。
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