12人が本棚に入れています
本棚に追加
「『Pinwheel』って『かざぐるま』ですよね?私、弾いている時に海の底や悲しい感じ…人魚を想像したんです。そしたら無性に悲しくなって…」
「海…?」
柊一の顔が、一瞬にして真剣になった。柊一が箏に触れた。それだけで鳥肌が立つ。
やはり明らかに先に弾いた藍の演奏とは格段の差を感じた。爪が弦を弾く時のノイズが一切ない。1つひとつの音がピンと張りつめていて、聴いていて安心できる音色…それはある種の技と言ってもいい。
鬼であることは変わりないが、それでもここにいるのは、やはり彼を尊敬しているからである。腹立たしくても、こんな一面を見ればすべてが水に流れてしまう。
(切ない表情…。きっと私なんかより想像の世界や、その色がハッキリしてるんだ)
いわゆる古典的な曲は、体でリズムをとることはそうない。だが最近は、ジャズやポップスを取り入れた曲も多くなってきた。柊一もそんな曲を作る作曲家、兼演奏家なのである。
最初のコメントを投稿しよう!