得た、もの。

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焦る時代に、 生まれ落ちた、私。 皆、時代のように 焦って飛んでいった。  置いて行かれたと、  頭を抱えてた。 でも、 飛んでいった人の足跡は そこで途絶えてた。 過去も、心の基(もと)も 風景も、空っぽで。 何を持っていけたんだろう。 淫靡な蒼い風船に乗って。 心の器だけを 持っていったのだろう。 奥底の、泣き声は 霧に霞む。 残った私は、 熱くて寒い砂漠を 歩く。 同じ風景だと感じる度、 不安定になる鼓動。 それでも。 心の中身を見つけたんだ。 自分の心の中身を。 それが、 私のためになるかは わからないけれど。 今を走る時、 醜い嫉妬を持つ、 自分を知った。 水ぶくれした足。 ちゃぷちゃぷ… 涙の音が聴こえる。 それでも生きている。 いつでも生きている。 これからも、 生きていく。 現実を、後悔せずに。 それだけを胸に抱えて。 この場所を出ていこう。  綺麗事だけでは   生きてはいけない。  綺麗事がないと   生きてはいけない。 得たものは。 私が在る、ということ。 それを信じてれば 何も怖いことは、ない。
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