迷走する花嫁

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「……あたし?」 仏花や位牌とともに、千鶴の遺影がそこにあった。 広い和室に、豪華な仏壇がさびしく置かれていた。 そしてその遺影は、眩しいくらいの笑顔で―――。 「君が……」 真弘がぽつりと口を開いた。 「君がなんで、千鶴のことを知ってるのかは知らない……けど……千鶴は、死んだ……2ヶ月前に……」 きっと今まで泣いていたのだろう、今にも泣きだしそうな声で、真弘は膝からくずおれた。 「あ…死……」 咲は、言葉に詰まった。 確かに、亡くなっている。 仏壇があるのだ。 しかし? 咲は横を向いた。 千鶴は、目の前の光景に言葉が出ないようだった。 咲は、人差し指を額にそっと充てた。 頭が、痛い。 いろんなことが、同時に起こりすぎて、しかも、不可思議なことばかりで―――。 と、突然、今までの出来事がサーッとビデオの早送りのように、頭の中を巡った。 咲は、悟った。 あぁそうか、俺には―――"視える"んだ。 "視える"―――。 小さいころから、聞かされていた。 東北には昔からイタコがいて、祖母もイタコであり、自分と椿もその血を受け継いでいると。 そして、イタコには視えないモノが視え、その視えないものと交信することができると。 今まで、"視える"ということすらなかったのだが―――そういうのは、突然目覚めるものらしい。 と、すると、千鶴は―――。
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