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並木の立ち並ぶ、小さな街の街路。
葉たちの会話が賑やかであろうこの路も、今は枯れ落ち、そのざわめきは聞こえない。
冷たい風に耐え、大地で背伸びする草花たちを、ぽつりと灯る街灯の灯火がやさしく見守っている。
ふわり。
白い翼が舞い降りた。
そこに現れた青年は、懸命に顔を上げて咲いている一輪の花の前に膝をつき、指先でそっと撫でる。
するとその花は僅かに光をまとい、やがて青年の掌に小さな光の玉となって浮かび上がった。
「一人でよく頑張ったな。一緒に、帰ろう」
そう言って、光をそっと包み込むと、その光は青年の掌の中に消えていった。
「よし。もうだいぶ回収できたし、そろそろ降らせても大丈夫かな」
青年は、大きく翼を広げて、空へと舞い上がる。
遥か街の上空まで来ると、片腕を横に薙いで七色の光を撒き散らし、青年はそのままふっと姿を消した。
光は街中に広がり、やがて白い姿となって街へ静かに降り注いだ。
寒い寒い、冬の季節がやってくる――。
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