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人間界で仕事を終え、異界へと戻ってきたジークは、大地に大きな根を伸ばし、空を覆い隠さんばかりに葉を茂らせた大樹の前に降り立った。
濃い藍色の髪をした、二十歳ほどに見えるその青年は人間の姿と変わらない。
しかし、その背中に持つ純白の翼は、この地に住まう季節を統べる者たち、〈天使〉であることの証だ。
ジークは、周りに白い光をまとっているその大樹に向かって、そっと掌を差し出す。
すると、先ほど人間界から連れてきた小さな光の玉が幾つも溢れ出し、それはゆっくり大樹の白い光に溶け込んでいった。
「無事に回収完了だ」
そう一言呟いて、ジークが広げていた翼を閉じると、翼は僅かに光を放って、白い小さな生き物へと成り変わる。
「お疲れ、ティル」
ジークの肩に現れたその生き物は、キュウと一声愛くるしい鳴き声をあげて答えた。
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