1章 季節を統べる者

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樹や花にも魂が在る。 魂の宿った草花は大地に根を張り、魂を失えばそれはやがて枯れていく。 それが、草花たちの命の仕組み。 それはつまり、魂がある限り、草花たちは美しい姿のまま存在し続けることが出来ると言うこと。 永遠に存在し続けることも、可能なのだ。 しかし、彼らの魂の存在というのは、それほど強いものではない。 魂が在り続けるためには、とても膨大な自然の力が必要だ。 異界では〈命の樹〉がその力となり、草花たちの永遠の存在を可能にしているのだった。 そんな異界に暮らす天使たちの仕事は、人間界の草花たちの命を守ること。 異界と違い、自然の力が弱い人間界では、草花たちはすぐに力を失い死んでしまう。 天使たちは、弱った草花の魂を異界へと連れ帰り、力を蓄えては再び人間界へと送り出していく。 こうして人間界の草花は、命を廻らせているのだ。
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