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際限の無いトートロジーに痺れを切らしたその人は、諦めたような息を吐く。
「お前の頼みだから仕方なく聞いてやるよ。俺は小野田裕人、一応同じクラスみたいだな」
口調も態度も最悪で、第一印象なんて限りなく悪いはずなのに、何故か、その人の言葉は胸にするっと落ちてきた。
きっと誰より私に甘くて、
きっと誰より優しい明弘が信頼している男――
そんな人が、
私を傷つける訳が無い
「裕人って呼ぶね?佐倉唯です。明弘に始終くっついているはずだから、明弘のおまけとでも思ってて?」
「あー、お前ら付き合ってるってわけじゃなかったんだな」
―――うーん、中学から一緒になった人たちはそういう風に思っちゃうのか。
「まさか。明弘は私のママだよ?」
「さっきも言ってたけど、ママとか母親とか――お前ら何なの?」
「そのままでしょ。無償の愛で、私を包んでくれる人なんて、家族以外には明弘しかいないもん」
「無償の愛、ねぇ」
そう呟く裕人は、私には気づくことの出来なかった明弘の気持ちをわかっていたのかな?
―――こうして、私達は『友達』になったんだよね。
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