initiation

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裕人 あの時は あなたのことを知らなかった あの頃、私の世界は一哉と明弘で完結していて、他の人なんていらなかったの。 ―――ガラッ 誰? 思い出に浸りたいの。 夢から醒めたくないの。 邪魔しないで。 「あ-……わりぃ」 私の涙を見て、ばつの悪そうな顔をする一人の男の子。 たぶんクラスメイトなんだろうけれど、涙で滲んで顔は見えない。 ただ泣きじゃくる私にむかってその人は、それ以上何も言ってこなかった。 スタスタと窓際の席に置いてあるカバンからスポーツタオルを取出し、何も言わずに教室から出ていった。 ―――その人は私の閉じた世界の扉を開いた人になったの。 でも、それに気付くのはもう少し先のお話。
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