5/5
前へ
/31ページ
次へ
「だって葵、さっきからなんか上の空だし。笑ってるけど、なんか寂しそうだし。 なんかあった?」 心配そうな表情で、顔をのぞき込まれる。 真っ直ぐに見つめてくる瞳に、いたたまれなくなって、視線を逸らす。 「なんでもないよ? ちょっと、寝不足なだけだから」 視線を逸らしたまま、苦笑して答える。 ―昔から、勘がいいから困るなぁ 「そうなのか?ならいいけどよ……」 辛かったら無理すんなよ? ほんとに、心配そうな表情で言ってくれるから、少し泣きそうになった。 ―ほらまた、君が優しくするから 僕、勘違いしそうになるじゃん。 「大丈夫だって! あ! それより、早く行かないといけないんじゃなかった?」 「あ゙、ほんとだ! やべぇ! 遅刻する! 」 これ以上話してると、泣いてしまいそうになるから、慌てて会話をずらして、言葉を紡ぐ。 「んじゃまた、新学期にな?」 右手を軽く上げて、じゃあ っと踵を返される。 「うん」 緩くはにかんで、バイバイ と小さく呟いた。 離れて行く背中を、見えなくなるまで見つめて、消え入りそうな声で呟いた。 「ごめんね、陸斗くん……―バイバイ」 .
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

271人が本棚に入れています
本棚に追加