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「だって葵、さっきからなんか上の空だし。笑ってるけど、なんか寂しそうだし。
なんかあった?」
心配そうな表情で、顔をのぞき込まれる。
真っ直ぐに見つめてくる瞳に、いたたまれなくなって、視線を逸らす。
「なんでもないよ?
ちょっと、寝不足なだけだから」
視線を逸らしたまま、苦笑して答える。
―昔から、勘がいいから困るなぁ
「そうなのか?ならいいけどよ……」
辛かったら無理すんなよ?
ほんとに、心配そうな表情で言ってくれるから、少し泣きそうになった。
―ほらまた、君が優しくするから
僕、勘違いしそうになるじゃん。
「大丈夫だって! あ! それより、早く行かないといけないんじゃなかった?」
「あ゙、ほんとだ! やべぇ! 遅刻する! 」
これ以上話してると、泣いてしまいそうになるから、慌てて会話をずらして、言葉を紡ぐ。
「んじゃまた、新学期にな?」
右手を軽く上げて、じゃあ っと踵を返される。
「うん」
緩くはにかんで、バイバイ と小さく呟いた。
離れて行く背中を、見えなくなるまで見つめて、消え入りそうな声で呟いた。
「ごめんね、陸斗くん……―バイバイ」
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