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パン職人はアンパンマンを実の息子のように可愛がりました。
そして、沢山の事をアンパンマンに教えました。
文字も言葉も、良い事も悪い事も、おいしいパンの作り方も。
教えられることはほぼ全部と言って言いほど教えました。
アンパンマンも何でも教えてくれるパン職人が大好きなのです。
パン職人には一人の助手がいます。
その助手はパン職人よりも二回り以上も若く、黒髪の癖毛の女性。
彼女はいつも家事や身の回りの世話もしてくれます。
あるとき彼女が、洗い終えた洗濯物が入った大きな籠を持ちながら庭へ歩いて行くのをアンパンマンは見ました。
アンパンマンは彼女の後ろをついて行きました。
サンサンと輝く太陽の下で二人は洗濯物を干しながら彼女は、アンパンマンに色々な話を聞かせたのです。
古風な家族の日常を描いた物語、未来の猫型機械が活躍する物語、アンパンマンが作られてパン職人が大変喜んだ事、。
どうして空が青いのか、アンパンマンの疑問、質問にも彼女は優しく微笑みながら答えてくれました。
アンパンマンは、また、パン職人と同じくらい彼女の事も好きなのです。
いつの間にか日が沈み、辺りからは各々の夕飯の匂いが立ち込めてました。
夕飯は三人で食卓を囲むのが当たり前でした。
焼きたてのパンを頬張り温かいスープに口をつける。
たまに口から零れる笑い声がより一層食事を美味しくさせました。
二人の優しさと愛情をたっぷりと注がれたアンパンマンはずっとこの日常が続く事を願いました。
そして、恩返しとしてパン職人を守る事を誓いました。
そんなアンパンマンにも知らない事が一つだけありました。
それは、アンパンマンには作られてすぐに棄てられた兄弟がいたと言う事です。
その事実を知るよしのないアンパンマンは、お日様の匂いがするシーツと布団にくるまりながら目を閉じました。
【充椿】
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