†出会い†

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あの日…あの夜。 僕はボンヤリした顔でメールを適当に打っていた。 僕は正直メールは大嫌いだ。 けれど女の子達は不思議な位メール好きだ。 …まぁ、そんな訳で、しょうがなく、最近付き合い始めた彼女に初めてメールを打ち、送信した。 眠りにつきかけた僕の耳に着信音が聞こえる。 メールだ。 僕はメールを開く。 「貴方は誰?」 …一言そう書いてある。 そういやメルアド教えてなかったっけと舌打ちする。 「フェリックスだよ。」 僕は塞がりかけた瞼を擦りながら、メールを再び送信した。 そうしてから再び眠りに落ちた。 どんな返事が返ってくるかなんて知りもしないで。 ††† 昼過ぎに携帯の音で目が覚めた。 「…もしもし…?」 「何で昨日メールくれなかったの?!」 携帯を離しても聞こえる程に大きな彼女のヒステリックな怒声。 僕はボンヤリした頭のまま、目をパチクリさせる。 「…え?僕は昨夜ちゃんとメールを送ったよ?」 「来てないわよ!?」 「でも返事だって…」 「そんなの知らないわよ!もういい!分かった!」 ブチッ …こうして一つの恋は見事に終わった。 「どういう事だよ…」 僕は頭を掻きむしりながら椅子に座り、メールを再び見る。 新しいメールが入っている。 彼女のアドレス…のはずだ。 僕は不思議な気持ちでメールを開く。 「》フェリックスさん。 初めまして。とても言い辛い事ですが、多分メールアドレスを間違えていらっしゃるかと思います。」 着信履歴を見ると、僕が最後に送信して10分もたっていない。 …つまり… 完全に僕のミスって訳だ。 あの時、起きてさえいたらこんな事にはならなかったのに。 僕は茫然として画面を見つめる。 不意にメールが届いた。 開く。 また彼女だ。 「》フェリックスさん。 あれから返事がないので心配になってメールしました。大丈夫でしたか?」 まるで今の僕を慰める様な内容に、僕は思わず返事を打つ。 「ご心配ありがとうございます。結果は見事に…失敗でした。折角丁寧にメールを送って頂いたのに…ごめんなさい。」
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