28人が本棚に入れています
本棚に追加
メールの送信ボタンを押して、僕は深く溜息を吐く。
何処の誰だか解らないけれど、失礼な事をした上に心配までさせてしまった。
本人が目の前にいたら赤面で土下座ものだ。
メールの返事は恐ろしい位早かった。
「そうですか…ごめんなさい。私も動転していて…最初に「別人ですよ」って書けば良かったですね。相手は彼女さん、だったんでしょうか?…なら余計にごめんなさい。」
あまりに謝るので、僕は何だか申し訳なくなって、返信した。
内容は大まかに言うと
こちらこそ迷惑かけた上に心配までさせて悪かった。
結果が悪かったのは自分のせいだから気にしないで。
みたいな事を書いた。
向こうから素早く返信が来た。
僕は多分この人は女の人なんだろうなぁ、なんて思いながら返事を読んでいた。
メールの言葉遣いや何かに優しさが滲んでいる。
僕は…何故だかこの人に興味を抱いた。
僕は返事を急いで打った。
「貴方の名前は?」
しばらく返事は来なかった。
10分位して、着信音が鳴った。
「私の名前はマリアです。何回もメールしてるのに、名前を言ってませんでしたね。ごめんなさい。」
そうして
「また良かったらメール下さい。」
と書いてあった。
それが始まりだった。
†††
彼女…マリアは僕よりかなり年上だという事。
文筆業をしている事。
そして僕と同じクリスチャンだという事。
兄弟は僕と同じ四人兄弟だという事。
そんな他愛のない話しをやり取りした。
僕は現在大学に行きながら働いている事。
ダンスや歌が好きな事…
後、ウェイクボードとドライブが趣味な事…本当に他愛のない事ばかり書いた。
彼女は「歌やダンスが好きなんだ…羨ましいな。」と返事をくれた。
僕はその時、彼女について何も知らなかったから、何気なく読んで、それで普通に「ダンスや歌って楽しいよ。」と書いた。
僕はその時彼女の本当の事を何も知らなかったんだ。
何も…何も解ってなかった。
彼女がどんな気持ちでメールを読んだかなんて。
†††
最初のコメントを投稿しよう!