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(はぁ。所詮は片思い、か)
そんな事を考えながら校門を越えた時であった。
「あの…」
「……ん?」
とぼとぼ歩いている桜に女の子が話し掛けてきた。
黒い髪はサイドに結われ綺麗なツインテールが出来上がっている。クリッとした大きい瞳に形のいい小鼻、小さくぷっくりとした柔らかそうな唇。
完全に可愛い女の子だった。背丈は桜より頭二つ分低くかなり小柄。
桜はその女の子に魅入っていた。美優とはまた別の雰囲気を醸し出しているこの女の子に惹かれたのかもしれない。
「俺に用?」
「その、手紙のお返事を……」
女の子が桜の持っている手紙を指差す。
「これ?」
コクンと女の子が頷く。
桜が持っている白い手紙は、桜のロッカーに入っていた物である。
何かあるんだろうがそんな気分ではないと思った桜は未開封のまま手紙を手に持ち校門を出たのだ。
綺麗に手紙を開けると桜は読み始めた。
「友井桜様へ。私は貴方の事がずっと前から好きでした付き合って下さ……ラブレター!?」
桜はあろう事か声に出して読んだ。ラブレターの贈り主であろう女の子は顔を真っ赤にして頷いた。
「えと、水城 春香ちゃんだよね?」
桜は手紙の下記にある名前を見て問う。
「はい……」
相も変わらず顔を朱色で染め上げている女の子、水城 春香は小さな声で答えた。
「これ、告白?」
桜の問いに頷く春香。
「俺に?」
またもや頷く春香。
「えーと、校門で待ってますっていうことは、今返事しなきゃ駄目?」
手紙の終わり頃に書いてある、お返事は校門で待ってます、とある所を見て尋ねる。
「できれば……」
桜はこの答えに戸惑った。どうするべきか?OKしておくか?この上目遣いは可愛いし。でも、簡単に決めるもんじゃないなよな。
最終的にそんな考えに至り桜は口を開いた。
「やっぱりお互いの事よく知らないし……」
桜がそこまで言うと春香は泣きそうな顔をして桜を見る。
「いや、だから駄目とかそういうんじゃなくて友達から始めない?」
途端に春香は笑顔になり強く頷いた。
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