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水城 春香。白金高校の一年生。成績優秀、容姿端麗と、目立っていたのだが、美優の事しか頭になかった桜は知らなかった。
春香たっての希望で一緒に下校する事になった。
「春香ちゃんは何で俺の事好きになったの?」
二人で歩き始め、会話がなかった為、桜が声をかける。
春香は立ち止まり、目をパチパチと開き閉じを繰り返す。
「どしたの?」
不思議に思った、桜も足を止め春香に声をかける。
顔を朱色に染めたかと思うと、春香は口を開いた。
その時、風が耳を切る様な音色をあげた。春香の声は桜に届くことなく、風に流された。
一本の立派な、桃色の花を咲かせた木が揺れる。桜の花びらが舞い二人を覆うかの様に散った。
「え?なんて言ったの?」
「……秘密」
「え~。教えてよ」
残念がる桜を見て春香はクスッと笑うと桜の手を握った。
「私…家行こっ」
「春香ちゃんの家?」
コクンと頷くと春香は桜の手を引っ張り歩き始めた。
「ちょっ引っ張らないでよ」
声を上げるもこれからが楽しみで笑みを零す桜であった。
その笑顔からは美優に対する未練はないようであった。
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