川越少年刑務所②

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翌日が日曜日でよかった。 工場に出役して運動があったら、きっとぶっ倒れるだろう。 布団に入り、そんなことを考えているうちに眠りについた。 その晩、私は夢を見た。 母親の夢だ。 熱を出している私の看病をしてくれている母。 「何か食べたいものはないの?」 優しく問いかけてくれる。 「かぁさん… 俺、冷たくて甘いものが食べたいなぁ」 「じゃあ 杏仁豆腐を作ろうか」 私は母の作る杏仁豆腐が大好きだった。 母は台所に立ち「固まるまでに少し時間がかかるから待っててね」と言った。 私はただ布団の中で待ち続けた。 ただ待つ。ひたすら待つ。 待っている途中で母は買い物に出掛けてしまった。 待っても待っても母は帰ってこなかった。 母が戻って来る前に私は目を覚ました。 夢であったことがわかると同時に無性に家に帰りたくなった。
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