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「いつ見ても食べ物無いね……」
「……そうだな」
少年二人が小屋の中を探索している。少女の方は兄の背に隠れる形で落ち着かない様子であった。
彼女は最初、半ばまで開けた扉から中に入れずに居たが、逆に目立つその行動を兄に叱られ今の状態になったという流れである。
少年二人は何も無い台所をひとしきり探索し終わり、少しがっかりした表情を見せる。
……空腹なのであろうか?
村の作物の出来が悪かったなどという噂を聞いた覚えは無い。だが私の耳に入る噂の量など高が知れている為あてにならないであろう。食糧を用意する事で被害を軽減できるならば、試してみる価値は有るかも知れない。
「……綺麗」
少女がまっすぐ私を見つめている事に気付いた。
台所に興味を無くした少年達から置いて行かれる形で、少女はその場に留まり私を見上げている。
外見にこだわる時間的余裕が無かった為、私が気紛れに作った壁飾りの一部に擬態しているのだが、やはり木製の物に透明な球体の飾りは不自然だったであろうか?
少年達は今まで見向きもしなかったのだが、宝飾に対する感性は女性の方が鋭いのであろう。
口を閉じるのも忘れたまま輝く瞳を私に向けている。
「ニーナ、そろそろ帰るぞ」
そんな彼女に声が掛けられた。
見ると少年達の手には戦利品が握られている。
おお。
あれは本のしおりに使う為に加工した木片ではないか……!
我ながら上手く削り出す事が出来たお気に入りの品である。
しおり自体はまた作れば良いのだが、それを抜き取った本はどこまで読んだか分からなくなっている事であろう。
……何と迷惑な。
憤慨する私の心情など知るべくもなく、呼ばれた少女は私から視線を外し、兄の元へと駆け寄った。
「あ。お兄ちゃんいいなあ……。わたしも何か欲しい!」
少年は驚いた顔をする。
そう。妹まで悪事に手を染めさせてはいけない。
「しょうがないなあ……。大きな物はバレるからダメだぞ?」
……そういう問題では無い。
出来れば制止して欲しいのだが。
「わたしあれが欲しい!」
そう言って私を指差す。
……待て。
考え直せ。
こんな大きな壁飾りを持って行くなど常識外だ。
少年も私と同じ意見だった様で、さすがにそれはすぐバレるという理由で断った。
「違うよ。あの真ん中の玉が欲しいの」
「うーん……。それなら良いか」
良くない。
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