出世と崩壊

2/6
前へ
/186ページ
次へ
俺は悩んでいた、今の自分がいるのは大勢のお客さんのお陰だ、しかし嘘で固めた世界でのやりとりだ、疑似恋愛したり風俗で働かせたり、酷いことしてつかんだ地位や収入、しかしその地位や収入の魅力に踊らされている。だからと言って今更全てを捨てて一般生活には戻りたくないし、仕事の仕方もそれがホストだから変えようがない、もう矛盾した考えだった、ホストが出世したら宿命なんだろう。たぶん今のホストで上に立っている方々は、皆さん同じ様な苦悩はしたことはあると思う。俺は昔はあんなに遊び人だった自分が今更いい人ぶった悩みなんか抱えてんじゃないよ、と自分に言い聞かせて仕事に、はげんだ。ときどき休みの日には二丁目のオーナーの店に行くようになっていた、なんかパッと飲んで一瞬でも心のモヤモヤが消えるような気がした。そんな俺を見て二丁目のオーナーは『しけた顔して、酒飲んで、ハジケテも次の日ツライだけだぞ』とボソッと言った俺は一瞬で酔いが醒めた、やはりオカマやゲイの方々は鋭い、悩みも話す前にだいたい把握していた。俺は全てをはきだして相談した。帰ってきた返事は予想外でますます悩みが膨らんだ。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1276人が本棚に入れています
本棚に追加