幸せの在処

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『そなたが阿修羅の血をひくという鬼か。兄上から、このようになった経緯は聞かされておるが……。そなた、名はなんという?』 突然目の前に現れた少女は、その幼い容姿に似つかわしくない不遜な物言いで、そう問い掛けた。 『……なに、覚えておらぬと?そうか、ならば私がそなたに名を与えよう』 そうして少女は、格子の向こうからじっと彼を見つめてから告げた。 『…決めた、朱羅だ。朱(アカ)という字に阿修羅の羅(ラ)と書く。そなたの美しい真紅の瞳を見ておると、阿修羅というより朱羅の方が相応しい気がする。今日からそなたを、私のものとする』 そうして彼女は、地下牢の扉を開き、彼を外の世界へ連れ出した。 『案ずるな、力のことは私が何とかする。兄上も、私が説得する』 今になっても、何故会ったばかりの少女が自分の為にあれだけの事をしてくれたのかは分からない。
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