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「ずっと、このまま…」
朱羅の身体があやめを優しく包み込む。
囁きが、そっと耳元を掠めた。
「このまま貴女と一つでいられたら良いのに…」
「……朱羅…」
あやめは彼の背中に両腕を回し、ぎゅっときつく抱きしめた。
いつもは自分よりずっと大人で、完璧な男の人だとばかり思っていた彼が、まるで自分に縋り付く小さな子供のように見えた。
少し危うげな、剥き出しの感情は、真っすぐ自分だけに向けられている。
--守ってあげたい、と。
いつも守られてばかりいる自分が、こんな事を思うのは可笑しいと思う一方で、確かにそう思っている。
--"好き"?
--"大好き"?
それとも
--"愛してる"?
どれも合っていて、でも少し足りない。
足りなくてもどかしい。
どう表現すれば良いのだろう。
この、溢れんばかりの愛おしさを…。
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