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「前から思ってたんだけど、朱羅って横文字が似合わないんだな」
あやめが至極真面目に言うと、今度は朱羅が微妙な顔をした。
「………そう、でしょうか」
似合わない、とは彼自身思っていたが、そう指摘されてもどうしようもない。
二人のやり取りが、どういうわけかツボにハマったらしく、宗一はテーブルに顔をつけて震えている。
行儀が悪いですよ、などと宗一を諭している刀祢も、心なし楽しそうだ。
ひとしきり笑うと気が済んだのか、涙を指先で拭いながら宗一は仕切り直しにかかった。
「あー、笑った笑った。まぁ、朱羅が爺臭いのは仕方ないから置いておくとして。で、行かないの?デート」
「…朱羅と私と、二人で?」
「そりゃそうでしょ。いくら僕でも、デートにまでくっついてくなんて野暮な真似はしないよ。だいたい、朱羅がついてれば安心だし。そうでなくても、今のあやめちゃんに敵うものなんて、そうそういないはずだよ」
朱羅とそういう間柄になった事を改めて口にする事はなかったが、宗一も刀祢も何故かとっくに知っていて、当たり前にそれを受け入れてくれていた。
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