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「行きたい場所はありますか?」
「分からない。デートなんてした事ないから。朱羅と一緒にいられるなら、どこでもいい」
横を見ないようにそう告げて、ごまかすようにお茶を飲み干すと、宗一がニヤニヤしながら生温い眼差しを向けてきた。
「おやおや。ご馳走さま~。やだねぇ、刀祢。あてられちゃうね」
「本当ですわね、ふふ」
自分の発言が招いた事とは言え、なんとなくいたたまれなくなって、あやめはガタンと席を立った。
「…着替えてくる」
「まぁ、では私お供させていただきますわ。僭越ながら、お召物の見立てをさせていただきとうございます」
「うん、頼むよ」
そうして二人の少女はまるで姉妹のように、和気あいあいとリビングを後にし、2階へと上がっていった。
彼女たちが去ってから、宗一は自分の器をキッチンに運び、洗うまではせずにドカリとソファーに腰をおろした。
「ねぇ、朱羅。御前をどこに連れて行くつもり?」
「……ついてくる気か?」
「やだなぁ。いくら僕でもそんな野暮しないよ。単純に聞いただけ~」
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