禁断の記憶

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   ◇ ◇ ◇ 「まさか水族館だとは思わなかった」 巨大な水槽で悠々と泳ぐ鮫を目で追いながら、あやめは言った。 二人が訪れたのは、自宅から車で1時間ほどの海沿いにある水族館だった。 定番といえば定番のデートコースだ。 「御前は水がお好きですから、こういった場所も好まれるのではないかと思いまして」 「うん、好き。小学生の時に、修学旅行で一度だけ水族館に行った記憶があるけど、あんまり時間がなくて満足に見れなかったんだ。ありがとう、嬉しい」 子供のように無邪気に喜ぶあやめを見て、朱羅も口元に笑みを浮かべる。 「朱羅は前にも来たことある?」 問いかけに、彼は首を横に振った。 「いえ。必要がありませんでしたし、行く相手もおりませんでしたので。私と浅葱が男2人でこういった所に来ていてもおかしいでしょう?」 想像すると、確かに違和感はある。
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