禁断の記憶

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「あなたと行きたい場所は、まだたくさんあります。これからも、こうして時々出掛けましょう」 朱羅の言葉に、あやめは少しはにかみながら頷いた。 もしなんの障害もなければ、時々と言わず毎日でもこうして二人で出掛けたい。 ただ、外出が危険な事は百も承知している。 平穏な生活を長く続けたいのならば、外になど出ない方が良いのだ。 それでも一緒に出掛けようという、自分を気遣ってのその一言が、あやめには嬉しかった。 「家の中でも、私は十分楽しいよ。だからあまり気をつかわないで。朱羅も、浅葱も、刀祢もいて、贅沢なくらいだ」 そう言ってあやめが笑った瞬間、ふっと影が近づいた。 「え…」 トンと背中が壁に当たり、目の前が見えなくなったと思った時には、唇が重ねられていた。 それは一瞬。 すぐに体を離して、朱羅は何事もなかったかのように水槽を仰ぐ。 「綺麗ですね。こうしてただ静かに魚たちを眺めているのも、悪くありません」 起きた出来事が錯覚ではないかと思わせるほど、彼はいつも通りだった。
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