禁断の記憶

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「御前…?」 狐につままれたような表情のあやめに、朱羅が問いかける。 「……え、あ……いや、ええと」 「…申し訳ありません、出来心です。そこまで動揺なさるとは思わず」 ふっと笑いを漏らす朱羅を見て、ようやくあやめは我に返った。 「動揺するよ、普通は。だって朱羅が驚かせるような事するんだもの」 「ふ……ははっ」 「ちょっと、朱羅!笑い過ぎだよ」 しかめっ面をしながらも、あやめはなんだか楽しかった。 こんなふうに屈託なく声を上げて笑う朱羅を見るのは、再会してから初めてのような気がした。 「もう少ししたら午後の部のイルカショーが始まります。早めに行って席を取りましょうか」 「うん」 差し出された手を自然に取って、あやめは彼に体を寄せる。 --幸せだ。 過去も未来も、しばらくは遠くへ置いておこう。 今この時の幸せだけが、ここにはある。
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