禁断の記憶

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「覚えてる?最初に会った頃は、凪は私のことをずっと『姫様』と呼んでいたでしょ?そして、再会してからは…」 「雪花、と呼んでいましたね。貴方の名を知り、貴方が鬼であることを知ってから、あの者は変わった」 「…うん」 都に行ってから、凪は亡き母の縁者の世話になり、やがてさる高名な陰陽師に弟子入りした。 そしてその才覚を認められた後は斎家の若き宗主となり、朝廷より鬼討伐の命を受け、再び常陸の国へと帰ってきた。 「別れた時には夢にも思わなかったんだ。まさか凪と刃を交わす事になるなんて」 雪花や凪の意志ではもはやどうしようもない局面まで、自体は進行していた。 常陸一円を統べる兄の命を受け、鬼の全軍を指揮しながら自ら先陣を切って戦っていた雪花が、馬上の凪の姿を認めた時、同時に彼も雪花の存在に気付いた。 目があった一瞬、全ての時が止まったかのように、静寂を感じた。 成長してはいたが、精悍な顔つきには確かに昔の面影が残っており、間違いようがなかった。
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