禁断の記憶

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”なぜ…” ただ一言、そう問いかけることも出来ぬまま、それから7日の間に幾度か戦場で相まみえた。 交わすのは言葉ではなく、刃。 --そして7日目の夜、降伏を申し入れたのは雪花だった。 「私は凪と…いや、斎影明という名の斎家初代宗主と共に都に上り、自ら籠の鳥となる事を受け入れた。そしてあなたも、そんな私と一緒に京へ上ってくれたね」 「ええ…」 「私は敗者となる事を望んだ。彼を、傷つけたくなかったから。だが共に戦った同胞たちは、当然それを許さない。…結果、影明と私の命を狙う追手が、日々周辺をうろつく様となった。あれは、全て私の過ちだ」 「ですが、後悔はなさっていないのでしょう?」 口を開く代わりに、あやめは苦く笑った。 後悔はしていない。 だが、それによって朱羅や浅葱を巻き込んだことには、やはり負い目を感じているのだ。
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