禁断の記憶

15/22
前へ
/98ページ
次へ
   ◇ ◇ ◇ 「どうした?影明」 薄暗い和室に入るなり、雪花はその異変に気付いて眉をひそめた。 「別にどうも」 「灯りもつけずにこんな所に一人でいて、どうもしないという事はなかろう。何があったのだ」 すると影明は畳を軽く叩き、自分の隣に座るよう促した。 「俺に縁談が持ちかけられている事を、知っているか?」 問いかけに雪花が黙って頷くと、影明は小さく溜息を落とした。 「…どう思う?」 続けざまに聞かれ、今度は少し返答に困った。 「どう、とは…?」 何に対しての『どう思う』なのか分からない。 縁談の相手は公家の血を引く美しい娘だと聞いた。 しかも縁談を持ちかけたのは、今をときめく右大臣だ。 申し分ない、どころの話ではない。 「良い話だとは思うが……不満なのか?」 率直に客観的感想を述べると、彼は微かに眉を寄せた。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!

264人が本棚に入れています
本棚に追加