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◇ ◇ ◇
「どうした?影明」
薄暗い和室に入るなり、雪花はその異変に気付いて眉をひそめた。
「別にどうも」
「灯りもつけずにこんな所に一人でいて、どうもしないという事はなかろう。何があったのだ」
すると影明は畳を軽く叩き、自分の隣に座るよう促した。
「俺に縁談が持ちかけられている事を、知っているか?」
問いかけに雪花が黙って頷くと、影明は小さく溜息を落とした。
「…どう思う?」
続けざまに聞かれ、今度は少し返答に困った。
「どう、とは…?」
何に対しての『どう思う』なのか分からない。
縁談の相手は公家の血を引く美しい娘だと聞いた。
しかも縁談を持ちかけたのは、今をときめく右大臣だ。
申し分ない、どころの話ではない。
「良い話だとは思うが……不満なのか?」
率直に客観的感想を述べると、彼は微かに眉を寄せた。
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