禁断の記憶

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「なぜ…?」 問いかけを反芻し、影明は自嘲気味な笑みを浮かべた。 「何故って……気付かなかったとでも、言うつもりか?俺の気持ちにずっと気付かずに、これまでの歳月を過ごしてきたと?」 ---ガタンッ ふいに影明の手が伸び、大きな物音と共に雪花の視界は反転した。 反転した拍子にひっくり返してしまった文机が、片隅でおかしな角度になっている。 「…かげ…あき…」 「本当に、ずっと気付いていなかった?再会する前も、今も、ずっと俺は…」 上に被さる重みに、頭がついていかない。 状況を、理解できない。 見えるのは天井。 そして苦渋に満ちた、さ迷える眼差し。 「俺とあなたの生きる時間が違うことは知っている。あなたには朱羅がいることも分かっている。でも、駄目なんだ。あなたでなければ、意味がないんだ」 首筋に、熱い息がかかる。 素肌にいつもとは違う温もりが伝わる。
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