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一方美羽は、リュックに腕を通して立ち上がろうとするのだが、どうにもリュックが重たすぎてなかなか立ち上がれない様子。お前よくそれで我が家までたどり着けたな。
しかたなく俺は美羽からリュックを奪い取り、背負うことにした。あ、ちょっとこれは美羽が持つには重すぎるな。本当によくここまでこれたもんだ。
「面目ない……」
申し訳なさそうに呟く美羽。俺は「気にするな」と言いながらアパートの階段を下りていく。
そうして俺達は静まり返った住宅街を二人並んで歩いて行く。
そう言えばどこに行くのか聞いてなかったな。
「なぁ美羽。ピクニックってどこにいくんだ?」
「桜ケ丘だ。あそこの頂上が星を見るにはいいらしい」
あぁ~あそこか。確かにあそこは星を見るにはうってつけだな。しかし、あの丘を登るのか……
やっぱり大人しく家で寝ているべきだったんじゃないかと後悔しはじめてきた。まぁ今更いっても後の祭りなんだがね。
そんな俺を尻目に、美羽は見るからにウキウキとしたオーラを出し、俺の腕にひっついて歩いている。やめろ! こっちはお前がパンパンに孕ませたリュック背負ってんだぞ!
とは心で思っても口に出せない俺はジェントルメンなのか、はたまたただのチキン野郎なのか。その答えは神のみぞ知る。
なんてくだらないことを考えていると、いつの間にかもう丘のふもとまできていた。なぜだかいつもより傾斜が鋭く見えるのは、やはり疲れがたまっているからだろうか。
一面に生い茂る芝生、一直線に天に向ってそびえ立つ無数の桜の木。春になれば満開の花を咲かせるであろうそれらの木。しかし今は冬。ここで満開の桜を拝めるのはあと3か月ぐらいしたらだろうな。
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