太陽な君。月な俺。

5/7
前へ
/9ページ
次へ
「よし! 登るぞ!」    美羽はそう言うと、何を思ったか走って丘を登りはじめやがった。まぁ元気なこと。残念ながら先日二十歳の誕生日をむかえた俺には、そんな体力も元気もあったもんじゃない。ってあいつも俺と同い年だっけ。いいねぇ若々しくて。ちょっとそのパワーをわけてくれ。  しかし、いつまでもぐちぐちと考えたところで、実際いきなり力がみなぎるはずもなく、しかたなく俺は重たいリュックを背負いながら、ゆっくりと丘を登っていくことにした。 「おーい! 遅いぞぉー! 早く早く!」  気がつけば、美羽はすでに頂上についていた。そこから俺を見降ろして、手を振って叫んでいる。アイツ、俺がお前のリュックを持ってやってるってことわすれてるだろ。  それからしばらく美羽に煽られながら登って行き、なんとか頂上にたどり着くことができた。もう満身創痍です。  俺は肩で息をしながら、その場にドサっと座り込んだ。すると、美羽が俺のもとに駆け寄ってきた。 「これぐらいでだらしないな、君は」  呆れながらそう言った美羽は俺の横に腰をかけると、リュックを空け、中の物を取り出し始めた。  まず美羽が取り出したのは、丁度二人が座れる程度のブルーシートだった。美羽はブルーシートを広げ、中央にリュックを置いてシートを固定する。そこからがすごかった。    次から次へと出てくるお菓子の数々。学校でお菓子は五百円までって教わらなかったのか? ざっと見積もっても三千円分ぐらいあるだろう。  それだけにとどまらず、2リットルは入ろうかというほど大きな水筒を二つ、リュックの中から姿を現した。そうか、あれだけ重かったのはこの水筒のせいだったのか。  美羽はお菓子や水筒を芝生の上に並べて座ると、自分の隣をポンポンと叩いた。そこに座れってか。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加