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「よし! 登るぞ!」
美羽はそう言うと、何を思ったか走って丘を登りはじめやがった。まぁ元気なこと。残念ながら先日二十歳の誕生日をむかえた俺には、そんな体力も元気もあったもんじゃない。ってあいつも俺と同い年だっけ。いいねぇ若々しくて。ちょっとそのパワーをわけてくれ。
しかし、いつまでもぐちぐちと考えたところで、実際いきなり力がみなぎるはずもなく、しかたなく俺は重たいリュックを背負いながら、ゆっくりと丘を登っていくことにした。
「おーい! 遅いぞぉー! 早く早く!」
気がつけば、美羽はすでに頂上についていた。そこから俺を見降ろして、手を振って叫んでいる。アイツ、俺がお前のリュックを持ってやってるってことわすれてるだろ。
それからしばらく美羽に煽られながら登って行き、なんとか頂上にたどり着くことができた。もう満身創痍です。
俺は肩で息をしながら、その場にドサっと座り込んだ。すると、美羽が俺のもとに駆け寄ってきた。
「これぐらいでだらしないな、君は」
呆れながらそう言った美羽は俺の横に腰をかけると、リュックを空け、中の物を取り出し始めた。
まず美羽が取り出したのは、丁度二人が座れる程度のブルーシートだった。美羽はブルーシートを広げ、中央にリュックを置いてシートを固定する。そこからがすごかった。
次から次へと出てくるお菓子の数々。学校でお菓子は五百円までって教わらなかったのか? ざっと見積もっても三千円分ぐらいあるだろう。
それだけにとどまらず、2リットルは入ろうかというほど大きな水筒を二つ、リュックの中から姿を現した。そうか、あれだけ重かったのはこの水筒のせいだったのか。
美羽はお菓子や水筒を芝生の上に並べて座ると、自分の隣をポンポンと叩いた。そこに座れってか。
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