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美羽は俺をしっかりと見据え、一つ一つ言葉を選びながら、自分の思っていることを形にしていった。
「人は皆一人じゃ生きられないと思うんだ。親がいなければ生まれることすらできないし、学校にも行けない。友達だっていなければ寂しいだろ? それに……」
少しためて、美羽はゆっくりと口を開く。
「君がいないと……私は生きていけない。君は私にとっての太陽だな」
美羽は頬を少し赤らめながら、満面の笑みを俺に向けた。そう。その笑顔はまるで太陽のようだった。
よくそんな臭い台詞吐けたもんだ。
でも、美羽の言うことも一理ある。俺だって最初から一人で生きてきたわけじゃない。まだ生まれてから二十年しかたってないけど、いろんな人達に支えられてここまでこれたっていうのは自覚してる。
でも俺はそれが嫌で、高校を卒業してすぐに一人暮らしを始めた。自分でもよくわからないけど、どうも人に頼って生きていくのが嫌だった。けど、結局俺は一人で生きていくことはできなかったみたいだ。
美羽は俺が太陽だって言ったけど。俺からしたらそれは逆になる。人はやっぱり一人じゃ生きていけなくて、皆自分にとっての太陽がいないと輝けない月なのかもしれない。
だけど、自分のことを月だと思っていても、誰かにとっては自分は太陽だったりする。そしてその誰かもまた、他の誰かにとっては太陽で。
そう考えると、天に浮かんで温かい光を放っているまん丸い月や、淡いピンク色に光っているあの星達も、もしかしたら誰かにとっての太陽になっているかもしれない。
「どうしたんだ? さっきから黙り込んで」
先ほどと同じように、太陽のような笑顔を俺にむける美羽。俺は恥ずかしくて、思わず視線をそらせた。そして行き場を失った俺の視線は、再び空へと向かう。
俺は夜空に輝く星や月を眺めながら、小さく呟いた。
「案外悪いもんじゃないな」
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