第一章 成立

14/21
1293人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
しかし、そんな気持ちとは裏腹に、龍馬は軽快に笑った。 「わしは坂本龍馬。おんしの名は?」 「初めまして。あたしはサク」 「呼び名じゃのうて、おんしの名を教えてくれんか?」 サクは僅かに顔をしかめた。 龍馬から岡田に視線を移す。 「以蔵、あんた言ったでしょ」 おお怖、と岡田は肩を竦めてみせた。 息を吐き、サクは龍馬へ視線を戻した。 「じゃあ聞くけど…」 サクの目を見て、龍馬は思った。 「何故教えなきゃいけないの?」 彼女の目は、まるで硝子玉のようだった。 ものを映すだけの、硝子玉のようだった。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!