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侍は、落ち着きや余裕を思わせる雰囲気を醸し出していた。
ゆっくりと、龍馬へと向かってくる。
自然と、龍馬の刀の柄を握る手に力が入った。
目が合った。
侍は小さく笑みを浮かべており、余計に龍馬を困惑させた。
そんな龍馬の脇を、侍は素通りした。
そして、なんと。
龍馬の後ろに居た男たちを斬り伏せたのだ。
【この者は奴らの仲間じゃなかったがか!?】
侍の行動に、ただただ驚くばかり。
そして、刀さばきに目を見張るばかりだ。
手練れだとよく分かる。
一人を袈裟斬り、一人の首に一太刀、一人の腹に一太刀。
「何故…っ」
最後の浪士が、血と共にそう吐きながら倒れた。
刀をおさめた侍は、突っ立っている龍馬に言った。
「早う逃げるぜよ。宿まで送る」
動かない、いや、動けない龍馬に、侍は続けた。
「死にたいんか?坂本さん」
「!?」
何故、自分を知っている?
訳が解らなくなって、更に動けなくなってしまった龍馬に痺れを切らしたのか、侍は龍馬の腕を掴んだ。
そして、龍馬の返事を聞かずに走り出した。
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