第一章 成立

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侍は、落ち着きや余裕を思わせる雰囲気を醸し出していた。 ゆっくりと、龍馬へと向かってくる。 自然と、龍馬の刀の柄を握る手に力が入った。 目が合った。 侍は小さく笑みを浮かべており、余計に龍馬を困惑させた。 そんな龍馬の脇を、侍は素通りした。 そして、なんと。 龍馬の後ろに居た男たちを斬り伏せたのだ。 【この者は奴らの仲間じゃなかったがか!?】 侍の行動に、ただただ驚くばかり。 そして、刀さばきに目を見張るばかりだ。 手練れだとよく分かる。 一人を袈裟斬り、一人の首に一太刀、一人の腹に一太刀。 「何故…っ」 最後の浪士が、血と共にそう吐きながら倒れた。 刀をおさめた侍は、突っ立っている龍馬に言った。 「早う逃げるぜよ。宿まで送る」 動かない、いや、動けない龍馬に、侍は続けた。 「死にたいんか?坂本さん」 「!?」 何故、自分を知っている? 訳が解らなくなって、更に動けなくなってしまった龍馬に痺れを切らしたのか、侍は龍馬の腕を掴んだ。 そして、龍馬の返事を聞かずに走り出した。
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